岩多箸店では、お箸の修理のご相談を承っております

─── 還暦祝いに娘夫婦からプレゼントされた箸の先端を誤って削ってしまいました。販売元にも問合せしましたがダメでした。そんな時、ネットで貴社のことを知り、箸の修理の相談をしました。そして修理できますとお返事いただきお願いしたところ、快く引き受けていただきました。キレイに修理していただき、大変満足しております。 (埼玉県 A様)

 

─── 娘が大事にしていた箸を噛んでしまい、箸先が欠けてしまいました。インターネットで検索したら、貴社のサイトを見つけ連絡しました。修理後、娘に見せると大変喜んでいました。本当にありがとうございます。 (神奈川県 M様)

 

─── 箸を修理して使う考えがなく、今までは買い換えていました。しかし5年ほど愛用していた箸が傷ついてしまい、どうしても直して使いたいと思い、こちらに修理をお願いしました。手元に届いたとき、見事に箸がよみがえり感激しました。末永く愛用させていただきます。  (千葉県 U様)

 

あなたは、どのようにしてこのブログにたどり着かれたでしょうか?

「お箸の修理」をしている業者は数が少なく、苦労されてここに来られたことと思います。

はじめまして、お箸製造の専門店「岩多箸店」の代表岩多裕之です。

ご期待に沿えるかはわかりませんが、これから、お箸製造の専門家の観点から、「お箸の修理」について話したいと思います。

 

まず最初に言わなければいけない事は、通常、お箸は消耗品であるということです。

お箸の先は、食事の時、お茶碗やお皿などの器に直接当たります。これが毎日毎日繰り返されるので、どうしても擦り減っていくことになります。

また、お箸の先は細いので、箸先を誤って噛んでしまったり、何かに挟んだりして欠けたり、折れたりする事も多いと思います。あなたもそうですか?

このように、お箸が傷むことのほとんどがお箸の先なんです。

一般的には、折れたりはげたりしたお箸は処分して新しいお箸に取り替えると思います。これが消耗品と言われる所以です。

しかし、記念日にいただいたお箸だったり、、素敵な手描きの蒔絵のお箸だったり、長年大事に使っていた愛用品だったりしたらどうでしょう。直してでも使いたいですよね!

 

そのようなご要望にお応えするため、岩多箸店ではお箸の修理のご相談を承っているんです。

ただ、全てのお箸が直せるわけではありません。また、買った時と全く同じようになるわけでもありません。そのあたりは、あなたの要望をお聞きし、こちらからの意見と合わせて、どのように直すか決めていきます。

 

では、お箸の修理はどのようにして進んでいくか、一例を具体的に話したいと思います。

今回の修理は、うるし塗りのお箸の片方が折れた場合についての話です。

 

まず、あなたから、メールや電話でお箸のご相談を受け付けます。その時に、どちらで購入したかや、表面塗装は何かなどがわかればありがたいです。また、その時にお箸の写真があれば、その場で修理が可能かどうかの簡便な診断が出来ます。

このご相談で、修理が出来そうということであれば、当店に修理を希望しているお箸を送っていただくことになります。

 

お箸がこちらに着いたら、まずお箸の状態を一から調べます。写真ではわからないような傷や、木地に水分が入り込んで傷んでいたり、見えないヒビが入っている場合もあり、ここで修理可能かどうか正式に調べます。残念ながらご希望に添えないこともあります。

この調査で、修理すればこれからも十分使用できるということを確認し、どのような仕上がりになるかをあなたに確認していただいてから、修理を始めます。

 

ここまでで、何度もやり取りすることになります。ただ、ここまで決まれば、修理が終わるまで余程のことがない限りやり取りはありません。

 

いよいよ修理を始めます。ここからは前にも話したとおり、片方のお箸が折れたという前提の話しです。

まず、折れた箸の方から修理します。折れた部分を含めた箸先を削ります。箸先は細く食べ物をつまみやすくなっています。よって使いやすいように、上の方から徐々になめらかになるように、小刀で削ります。鉛筆削りの要領です。

 

折れた方の箸先が綺麗に整ったら、次は折れてない方です。

まずは長さを合わせて、箸先を同じ長さになるように切断します。

この切断時、箸先を短く切ってしまうと、直した方もやり直しなので、緊張の一瞬です。

 

同じ長さに切断したら、先程と同じようになめらかになるように削っていきます。この時、両方の削った部分が同じ太さ•同じ形状になっていないと綺麗に仕上がらず、使いにくくなってしまうので、しっかり合わせます。

 

切断と削りの作業が終ると、漆塗りの作業に入ります。

漆を塗る前に、これ以上うるしがはみ出さないようにマスキングテープを巻きます。このマスキングテープは、今後うるしを塗るたびに使用することになります。

 

お箸を削っているので、現状のお箸は木地が見えています。その木地の部分に、目止めとして生漆を塗ります。このうるしは、木地が吸いこむので、早く乾きます。

 

ちなみに、うるしが乾くといいますが、厳密にいうと、漆の性質上、固まるというのが正解なんですよ。

 

その後、下地うるしを塗ります。これも薄く塗るので、比較的早く乾きます。

 

乾いたら、次は中塗りです。岩多箸店ではここから上塗りうるしを使います。

これも乾いたら、軽く表面を磨きます。この時、凹凸など形状に気をつけます。この中塗りと磨きを三回繰り返します。

 

これが終わったら上塗りです。

注意点としては、うるしは、気温や湿度などによって乾く速さが変わります。

早く乾かすと、漆本来の色である茶褐色の色が出て、黒っぽくなります。遅すぎると、いつまでたっても乾かない状態になってしまいます。それほど、うるしはデリケートなんです。

 

このため、お箸の直している部分と直してない部分の色が違ってしまいます。

また、直している部分と直してない部分に段差もできてしまいます。

 

そこで当店は、箸先に乾漆粉を付ける事を提案しています。これだと、色が変わっても問題ないし、丈夫にもなります。

また、食べ物もつまみやすくなります。

 

ではここから、乾漆粉を付ける修理の話です。

 

漆の上塗りが乾いたら、乾漆粉を箸先に付けます。

やり方は、お箸にうるしを塗り、乾く前に乾漆粉を振りかけるという方法です。

これが乾いたら、この乾漆粉をお箸にしっかりくっつけるため、うるしで上から止めます。

そしてまた乾かします。

 

うるしを乾かすという言葉をよく使っていますが、ただそのままにしておいているのではありません。うるしは、適度な温度と湿度がないと乾かないんです。固まると言う所以です。このため当店では、温度と湿度を管理したフロという部屋で、乾かします!

 

乾漆粉止めが乾いたら、その部分を磨きます。そのままではザラザラしすぎなので、口触りが良く、かつ食べ物が滑らないようにします。

この磨きは繊細な作業です。磨きすぎてツルツルにしてしまうと、一からやり直しになってしまいます!

 

まだまだ作業は終わりません。

 

このあと、その乾漆粉を付けた部分にうるしを摺り込みます。いわゆる『摺りうるし』や『拭きうるし』と言われる工程です。

この工程を最低三回。状態により四回施します。

 

これで一回一回乾かし、最後にしっかり乾かしたら修理は完了となります。

修理期間は1か月から2か月かかります。

 

ただ一口にお箸の修理と言っても、これだけ長い時間と手間がかかります。

最初に話した、お箸の修理をする業者が少ないというのもうなづけると思います。

 

この話は、うるし塗りのお箸で、お箸の先を乾漆仕上げにするものでした。

ですので、別のお箸では違う工程となります。

 

最後にこれだけは言っておきたいことがあります。

全部のお箸が修理できるわけではありませんが、ご相談はできますということです。

 

長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。これからも、あなたの知りたいことに答えていければと思っております。